📘新リース会計基準 実務解説シリーズ 第5回

例外の取扱い ― 「短期リース」と「少額リース」をどう扱うか?

こんにちは。シリーズ第5回では、借手のリースのうちオフバランス処理をする「短期リース」と「少額リース」を解説します。

すべてオンバランスですが実務的な配慮あり

新リース会計基準(企業会計基準第34号)では、すべてのリースを原則として借手の貸借対照表に計上する「使用権モデル」が導入されましたが、実務上の負担や重要性に配慮し、使用権資産及びリース負債をオンバランスせず、借手のリース料を定額法による費用処理とする例外的な取り扱いが認められています。
今回は、「短期リース」と「少額リース」という2つの例外規定について、適用指針の第20項~第22項を中心に、実務的なポイントを整理します。

掲載済み記事との関係

短期リースに該当するかどうかを判断するには、「リース期間の判定」が前提となるため、第3回の記事(いつまでが「リース期間」?)の知識が必要です。
すべてのリースを第4回記事で取り上げたような使用権資産及びリース負債をオンバランスすることがマストというわけではない点に注意してください。

短期リースについて

短期リースとは、リース期間が12か月以内かつ購入オプションを含まない契約を指します。リース開始日時点ではリース期間は12か月以内だけど、延長する可能性がある契約を対象とすることは認められていません。
すべての有形固定資産及び無形固定資産について一律適用ではなく、
①原資産を所有していたと仮定した場合のBS表示科目ごと、又は
②性質及び企業の営業用途が類似する資産グループごと
に適用するか否かを選択できます。

少額リースについて

適用指針第20項では、リース契約の重要性が乏しいと判断される場合に、使用権資産・リース負債の計上を省略できるとされています。
その判断基準としては、
(1)重要性が乏しい減価償却資産(10万円未満と考えられます)について購入時費用処理されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース
・リース料に含まれる利息相当額だけ基準額を高めに設定できます。
・リース契約に複数の原資産が含まれる場合、原資産の単位ごとに基準額以下かどうかの当てはめをすることが認められています。
(2)①又は②を満たすリース
 ① 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいケース
 ②新品時の原資産の価値が少額であるリース(リース1件ごとの判定)

(2)①における重要性として旧リース取引基準での「契約1件あたり300万円」、②における少額の判定において「5,000米ドル相当額」といった水準を新リース基準適用においても踏襲できることが、それぞれBC43項及びBC45項において定められています。

事例を通じて具体的に考えてみましょう。

当社はリース会社と以下の契約を締結しました。
・PC50台のリース。リース期間は3年。
・1台当たり9万円、利息相当額を含めると9.9万円。3年の場合の利息相当額を10%として計算しています。維持管理費用は1台当たり1万円(利息相当額を含めると1.1万円)。9万円は新品での購入価額に相当する。
・したがって、本リース契約の合計は利子抜きで450万円(利子込み495万円)

(1)のケース
 原資産の利息相当額を加味した基準額は10万円×110%=11万円
 9.9万円<11万円
 原資産ごとの判定のため、少額リースに該当する。
(2)①のケース
 本契約におけるリース料総額(495-1.1×50)=440万円 > 300万円
 すべて器具備品勘定の対象となるPCであるため契約総額である495万円で判定。
 このケースでは維持管理費用相当額を控除してよいが、それでも300万円を超過するため、少額リースに該当せず、使用権資産及びリース負債の計上が必要。

(2)②のケース
 すべてのリース物件の新品購入時の価額が1台9万円 < 5,000ドル
 したがって、少額リースに該当する。

どの方法を採用するかによりオンバランスが必要かどうかの結論が変わりうるため、慎重な判断が求められます。

短期リースの注記

短期リースの簡便法を適用した場合、当該リースに係る費用の金額を注記する必要があります(適用指針100項)。

ただし、「リース期間が1か月以下の契約」や「少額リースに係る費用」は、注記対象外です。

したがって、短期リースで少額リースでないリースについては、オフバランスであっても残高および発生費用の把握・集計は必須となります。

📅 次回予告:第6回:リース期間中の会計処理」
👉 投稿予定:2025年7月29日

使用権資産の減価償却、リース負債の利息計上、契約変更時の再測定など、日々の会計処理を実務の視点から丁寧に整理していきます。

Copyright © 石谷敦生公認会計士事務所
トップへ戻るボタン